トラックドライバーの皆さんは、高速道路や一般道で見かける「Nシステム」について、正しく理解していますか?オービスと混同して急ブレーキを踏んでしまい、ヒヤッとした経験がある方も多いのではないでしょうか。
Nシステムは、実は速度違反の取り締まりとは全く違う目的で設置されています。正しい知識を身につけることで、無用な心配をせずに安全運転に集中できるようになります。
この記事では、Nシステムの基本的な仕組みから主な特徴、設置目的まで、トラックドライバーの皆さんが知っておきたい情報を詳しく解説します。オービスとの違いも分かりやすく説明するので、今後の運転に役立ててください。
Nシステムって何?トラックドライバーが知っておきたい基本のき
高速道路を走っていると、道路の上にカメラのような装置が設置されているのを見かけますよね。その中でも、Nシステムは多くのドライバーが気になる存在です。
まずは、Nシステムの基本的な仕組みについて理解しましょう。
正式名称は「自動車ナンバー自動読取装置」
Nシステムの正式名称は「自動車ナンバー自動読取装置」といいます。この「N」は、ナンバー(Number)の頭文字から名付けられました。
つまり、車のナンバープレートを読み取ることが主な機能なのです。通過する車両のナンバープレートを自動的に撮影し、データとして記録します。
この装置は都道府県警察と警察庁が管理しており、「車両捜査支援システム」とも呼ばれています。
オービスとは全く違う目的で作られたシステム
多くのドライバーが勘違いしているのが、Nシステムとオービスの目的です。オービスは速度違反を取り締まるための装置ですが、Nシステムは犯罪捜査や手配車両の追跡に使われます。
そのため、Nシステムには速度を測る機能は一切ついていません。普通に制限速度を守って走行していれば、何も心配する必要はないのです。
ただし、車検切れの車両を発見するためにも使われることがあるので、車検の有効期限には注意が必要です。
全国1,500カ所以上に設置されている現状
2015年時点のデータでは、全国に約1,690台のNシステムが設置されています。オービスの約4倍の台数で、高速道路だけでなく一般道にも多数設置されているのが特徴です。
最近では、持ち運び可能な可搬型のNシステムも導入されており、設置場所はさらに増加している傾向にあります。
【必見】Nシステムの主な特徴10個をわかりやすく解説
Nシステムには、多くのドライバーが知らない特徴があります。これらの特徴を理解することで、より安心して運転できるようになります。
1. 通過する全ての車両を自動撮影している
Nシステムは、設置場所を通過するすべての車両を撮影します。速度違反をした車両だけでなく、制限速度を守って走行している車両も含めて、例外なく記録されるのです。
撮影範囲は、カメラの真下だけでなく、路肩を含む道路上のすべての車両が対象となります。つまり、どの車線を走っていても撮影されると考えておいた方が良いでしょう。
2. 赤外線カメラで目に見えない光を使用
Nシステムは赤外線カメラを使用しているため、撮影時に目に見える光を発しません。そのため、多くのドライバーは撮影されていることに気づかないのです。
ただし、ドライブレコーダーには赤外線が光として記録されることがあります。録画映像を確認すると、Nシステムの位置が分かる場合もあります。
3. ナンバープレートだけでなく運転者の顔も撮影可能
Nシステムの高性能カメラは、ナンバープレートだけでなく、運転者や助手席の同乗者の顔まで撮影できます。車種や色、外装の特徴なども詳細に記録されます。
この機能により、盗難車や犯罪に使用された車両の特定がより正確に行えるようになっています。
4. 撮影データを約30年間保存している
撮影されたデータは、約30年間という長期間にわたって保存されます。この蓄積されたデータは後から検索することも可能で、過去の犯罪捜査にも活用されています。
長期保存により、時効が長い重大犯罪の捜査にも対応できる仕組みになっています。
5. 速度測定機能は一切ついていない
Nシステムには、速度を測定する機能は一切ありません。そのため、制限速度を超えて走行していても、Nシステムだけでは速度違反で検挙されることはないのです。
ただし、異なる2つのNシステムに同じナンバーが撮影された場合、その距離と撮影時間から移動速度を計算することは技術的に可能です。
6. 事前の警告看板がほとんどない
オービスの場合は「速度取り締まり中」などの警告看板が設置されていますが、Nシステムには事前の警告看板がほとんどありません。
これは、犯罪捜査が目的であるため、設置場所を事前に知らせる必要がないからです。
7. 撮影時に光らないから気づかない
赤外線カメラを使用しているため、撮影時に光ることがありません。オービスのように強い光を発することがないので、多くのドライバーは撮影されていることに気づかないのです。
この特徴により、犯罪者に警戒されることなく、効果的な捜査支援が可能になっています。
8. 高速道路以外の一般道にも設置
Nシステムは高速道路だけでなく、一般道にも多数設置されています。国道や県道、市街地の幹線道路など、様々な場所で車両の通行を記録しています。
特に、空港や重要施設の周辺には多く設置される傾向があります。
9. 可搬式タイプも導入されている
最近では、固定式のNシステムに加えて、持ち運び可能な可搬式タイプも導入されています。これにより、必要に応じて設置場所を変更することができるようになりました。
可搬式タイプは、特定の捜査や取り締まりの際に一時的に設置されることが多いです。
10. 警察のデータベースと自動照合している
撮影されたナンバープレートの情報は、警察のデータベースと自動的に照合されます。手配車両や盗難車のナンバーと一致した場合、即座に警察に通報される仕組みになっています。
この自動照合機能により、24時間365日休むことなく、効率的な車両捜査が可能になっています。
Nシステムを設置する主な目的3つ
Nシステムが設置される目的は、大きく分けて3つあります。それぞれの目的を詳しく見てみましょう。
目的1:犯罪捜査での手配車両発見
Nシステムの最も重要な目的は、犯罪捜査における手配車両の発見です。様々な犯罪に関連する車両を効率的に追跡することができます。
盗難車両の追跡に威力を発揮
盗難された車両のナンバープレートをデータベースに登録しておくことで、その車両がNシステムを通過した際に自動的に発見できます。
盗難車は犯罪に使用されることが多いため、早期発見は非常に重要です。Nシステムにより、盗難車の行方を素早く特定し、被害の拡大を防ぐことができます。
凶悪犯罪の容疑者車両を特定
殺人や強盗などの凶悪犯罪が発生した際、容疑者が使用した車両の特定にNシステムが活用されます。事件現場周辺のNシステムデータを解析することで、容疑者の逃走ルートを把握できるのです。
過去のデータも検索できるため、時間が経過した事件の捜査にも有効です。
あおり運転の証拠収集にも活用
最近問題となっているあおり運転の取り締まりにも、Nシステムが活用されています。被害者からの通報があった際、該当する車両の行動パターンを追跡することができます。
複数のNシステムのデータを組み合わせることで、あおり運転の証拠を収集しやすくなっています。
目的2:無人検問システムとしての役割
Nシステムは、実質的に無人検問システムとしての役割も果たしています。人手を要する従来の検問では対応しきれない部分を補っています。
24時間365日休まず監視
人間による検問は時間や人員の制約がありますが、Nシステムは24時間365日休むことなく車両を監視し続けます。
深夜や早朝など、人手が不足しがちな時間帯でも、確実に車両の通行を記録できるのです。
人手不足を補う重要な装置
警察の人手不足が深刻化する中、Nシステムは効率的な車両監視を可能にする重要な装置となっています。
少ない人員で広範囲の監視が可能になり、警察業務の効率化に大きく貢献しています。
検問による交通渋滞を回避
従来の検問では、車両を停止させることによる交通渋滞が問題となっていました。Nシステムなら、車両を停止させることなく情報を収集できるため、交通の流れを妨げません。
特に物流業界で働くトラックドライバーにとって、交通渋滞の回避は業務効率の向上につながります。
目的3:車検切れ車両の発見と取り締まり
Nシステムは、車検切れ車両の発見と取り締まりにも活用されています。道路の安全性向上に重要な役割を果たしています。
自動車登録情報との照合で無車検を発見
撮影されたナンバープレートの情報を自動車登録情報のデータベースと照合することで、車検切れの車両を自動的に発見できます。
車検切れの車両は保険も切れている可能性が高く、事故が発生した際の被害が深刻になる恐れがあります。
可搬式Nシステムで取り締まり強化
可搬式のNシステムを使用することで、車検切れ車両の取り締まりを強化しています。特定の地域や時間帯に集中的に設置することで、効果的な取り締まりが可能になります。
車検切れ車両の運転者は、その場で車両を停止させられ、厳しい処罰を受けることになります。
道路の安全性向上に貢献
車検切れ車両の取り締まりにより、整備不良車両の排除が進み、道路全体の安全性向上に貢献しています。
特に大型トラックの場合、整備不良による事故は重大な結果を招く可能性があるため、適切な車検の実施は非常に重要です。
オービスとNシステムの違いを表で比較
多くのドライバーが混同しがちなオービスとNシステムの違いを、分かりやすく表で比較してみましょう。
項目 | Nシステム | オービス |
---|---|---|
主な目的 | 犯罪捜査・車両追跡 | 速度違反取り締まり |
撮影対象 | 通過する全車両 | 速度違反車両のみ |
速度測定機能 | なし | あり |
撮影時の光 | 光らない(赤外線) | 強く光る |
事前告知 | なし | 警告看板あり |
設置台数 | 約1,690台 | 約400台 |
設置場所 | 高速道路・一般道 | 主に高速道路 |
データ保存期間 | 約30年 | 違反時のみ |
目的の違いがすべて
最も重要な違いは、設置目的です。Nシステムは犯罪捜査が目的であり、オービスは速度違反の取り締まりが目的です。
この目的の違いにより、機能や運用方法も大きく異なっています。
撮影対象と方法の違い
Nシステムは通過するすべての車両を撮影しますが、オービスは速度違反を検知した車両のみを撮影します。
また、撮影方法も異なり、Nシステムは赤外線カメラで光らずに撮影し、オービスは強い光を発して撮影します。
設置場所と台数の違い
Nシステムはオービスの約4倍の台数が設置されており、高速道路だけでなく一般道にも多数設置されています。
オービスは主に高速道路の速度違反が多発する場所に設置されています。
事前告知の有無
オービスには「速度取り締まり中」などの警告看板がありますが、Nシステムには事前告知がありません。
これは、それぞれの目的の違いによるものです。
トラックドライバーが気をつけたいNシステムの影響
Nシステムは犯罪捜査が目的とはいえ、トラックドライバーにとって気をつけておきたいポイントがあります。
急ブレーキによる事故リスクに注意
Nシステムをオービスと勘違いして急ブレーキを踏むドライバーが多く、事故のリスクが高まっています。
Nシステム付近には、急ブレーキの痕跡であるブラックマークがよく見られます。中には、壁に車両がこすった跡が残っている場所もあります。
大型トラックの場合、急ブレーキによる事故は特に危険です。荷物の重量により制動距離が長くなるため、十分な注意が必要です。
プライバシーに関する考え方
Nシステムは通過する全車両を撮影するため、プライバシーの侵害を懸念する声もあります。
しかし、犯罪捜査という公共の安全を守る目的で運用されており、適切な管理のもとでデータが保存されています。
車検切れには特に要注意
Nシステムは車検切れ車両の発見にも使用されるため、車検の有効期限には特に注意が必要です。
車検切れで運転していると、その場で車両を停止させられ、厳しい処罰を受けることになります。
普段通りの安全運転を心がければ問題なし
Nシステムは犯罪捜査が目的であるため、普通に安全運転をしていれば何も心配する必要はありません。
制限速度を守り、車検を適切に受けていれば、Nシステムに撮影されても問題ありません。
Nシステムの設置場所と見分け方
Nシステムの設置場所や見分け方を知っておくことで、より安心して運転できます。
高速道路での設置パターン
高速道路では、インターチェンジの出入り口付近や、サービスエリア・パーキングエリアの前後によく設置されています。
また、県境や重要な分岐点にも多く設置される傾向があります。
一般道での設置場所の特徴
一般道では、国道や県道などの幹線道路、市街地の主要交差点付近に設置されることが多いです。
特に、警察署や重要施設の周辺には高い確率で設置されています。
空港や重要施設周辺での配置
空港や政府関連施設、原子力発電所などの重要施設周辺には、セキュリティ強化のため多数のNシステムが設置されています。
これらの施設周辺では、特に厳重な車両監視が行われています。
オービスとの見た目の違い
Nシステムとオービスは外見が似ていますが、いくつかの違いがあります。
Nシステムにはパトライト(回転灯)が付いていませんが、オービスにはパトライトが付いています。また、Nシステムの方が比較的コンパクトで、単独で設置されることが多いです。
今後のNシステム技術の進化
Nシステムの技術は日々進歩しており、今後さらなる発展が期待されています。
民間企業での活用が広がる可能性
現在は主に警察が使用しているNシステムですが、今後は民間企業での活用も広がる可能性があります。
セキュリティ強化や業務効率化のため、様々な分野での導入が検討されています。
工場やマンション駐車場での導入例
工場の入退場管理や、マンションの駐車場管理にNシステムの技術が活用され始めています。
ナンバープレートを自動認識することで、キーレスでの入退場が可能になり、利便性が向上しています。
物流業界への影響と効率化
物流業界では、配送車両の管理や荷物の追跡にNシステムの技術が活用される可能性があります。
より効率的な配送ルートの最適化や、配送状況のリアルタイム把握が可能になるかもしれません。
プライバシー保護との両立課題
技術の進歩とともに、プライバシー保護との両立が重要な課題となっています。
適切な運用ルールの策定や、データの管理方法について、今後も議論が続くでしょう。
よくある疑問と誤解を解消
Nシステムについて、多くのドライバーが抱く疑問や誤解を解消しましょう。
「Nシステムで速度違反になる?」の答え
Nシステムには速度測定機能がないため、Nシステム単体では速度違反で検挙されることはありません。
ただし、異なる2つのNシステムのデータから平均速度を計算することは技術的に可能です。しかし、現在のところ、この方法で速度違反を検挙することは一般的ではありません。
「撮影されたデータはどう使われる?」
撮影されたデータは、主に犯罪捜査や手配車両の追跡に使用されます。約30年間保存され、必要に応じて検索・照合が行われます。
適切な管理のもとで運用されており、犯罪捜査以外の目的で使用されることはありません。
「一般のドライバーには関係ない?」
一般のドライバーでも、車検切れや盗難車の発見に関係する可能性があります。
また、事故や犯罪の目撃者として、Nシステムのデータが証拠として活用される場合もあります。
「設置場所は公開されている?」
Nシステムの設置場所は、基本的に公開されていません。犯罪捜査が目的であるため、設置場所を事前に知らせる必要がないからです。
ただし、一部の民間サイトでは、ユーザーからの情報提供により設置場所をまとめているものもあります。
まとめ:Nシステムを正しく理解して安心運転を
今回の記事では、Nシステムの基本的な仕組みから特徴、設置目的まで詳しく解説しました。以下に重要なポイントをまとめます。
- Nシステムは犯罪捜査が目的で、速度違反の取り締まりには使用されない
- 通過する全車両を赤外線カメラで撮影し、約30年間データを保存している
- オービスとは目的も機能も全く異なる装置である
- 車検切れ車両の発見にも活用されるため、車検の管理は重要
- 普通に安全運転をしていれば何も心配する必要はない
- 急ブレーキによる事故を防ぐため、正しい知識を持つことが大切
- 全国に1,500カ所以上設置されており、今後も増加する傾向にある
トラックドライバーの皆さんにとって、Nシステムは決して恐れる必要のない装置です。正しい知識を持って、いつも通りの安全運転を心がけていれば問題ありません。
むしろ、犯罪の抑制や道路の安全性向上に貢献している重要なシステムとして、理解を深めていただければと思います。安全で快適な運転を続けるために、この記事の内容を参考にしてください。