最近、大卒でタクシードライバーになる人が増えているって知っていますか?
「せっかく大学を出たのに、もったいない」そんな声も聞こえてきそうですが、実際のところはどうなのでしょう。全国ハイヤー・タクシー連合会の統計によると、新卒でタクシードライバーになる人は年々増加しており、2021年には全国で924名もの新卒者がタクシー業界に入っています。
この数字を見ると、大卒のタクシードライバーが増えているのは間違いない事実。でも、なぜこんなにも多くの大学生がタクシー業界を選ぶようになったのでしょうか。
今回は、大卒のタクシードライバーが増えている理由を11個に分けて詳しく解説します。さらに、タクシードライバーに向いている人の特徴も3つご紹介。トラックドライバーや配達業、物流関係で働いている方にとっても、きっと参考になる内容です。
大卒でタクシードライバーになる人が本当に増えているの?
まず気になるのは、本当に大卒のタクシードライバーが増えているのかということ。数字で確認してみましょう。
新卒採用の実際の数字を見てみよう
全国ハイヤー・タクシー連合会のデータを見ると、驚くべき変化が起きています。全国155事業者での新卒採用者数は1,068人に達し、前年と比べて15.6%も増加しました。
特に東京都内の大手タクシー会社5社では、2010年にはわずか1名だった新卒採用が、2022年には491名まで急増。これは約500倍という驚異的な伸びです。
大手タクシー会社の採用状況
大手タクシー会社が新卒採用に力を入れるようになったのは、2010年頃から。それまでは中途採用がメインでしたが、ドライバー不足を背景に若手の採用を積極的に行うようになりました。
現在では、多くのタクシー会社が大学生向けの説明会を開催し、新卒採用に専門のチームを設けるほど力を入れています。
業界全体の変化を数字で確認
タクシー業界全体を見ても、若手ドライバーの割合は確実に増えています。従来のタクシードライバーの平均年齢は58.3歳と高齢でしたが、新卒採用の増加により、この数字も徐々に下がってきているのです。
大卒のタクシードライバーが増えている理由11個
では、なぜこれほど多くの大学生がタクシー業界を選ぶようになったのでしょうか。その理由を11個に分けて詳しく見ていきます。
1. 配車アプリの普及で働きやすくなった
スマートフォンの配車アプリが普及したことで、タクシードライバーの働き方は大きく変わりました。以前は街中を走り回ってお客さまを探す必要がありましたが、今では効率的に配車される仕組みが整っています。
これにより、未経験の若手ドライバーでも稼ぎやすい環境が整いました。アプリを使えば、どこにお客さまがいるかすぐにわかるので、経験の浅いドライバーでも安心して働けるのです。
2. キャッシュレス決済で効率的になった
現金のやり取りが減り、クレジットカードや電子マネーでの支払いが一般的になったことも大きな変化です。お釣りの計算ミスを心配する必要がなくなり、若いドライバーにとって働きやすい環境が整いました。
キャッシュレス決済に慣れ親しんだ世代にとって、この変化は特に歓迎すべきものでしょう。
3. 同世代より高い年収を稼げるようになった
実は、タクシードライバーの年収は思っているより高いのです。20代前半のタクシードライバーの年間推計額は約416万円で、全産業平均の約335万円を大きく上回っています。
東京では平均年収が約586万円となっており、これは東京都内の全産業の男性労働者の平均年収581万円を超える数字。頑張り次第では年収700万円から1,000万円を稼ぐドライバーもいるのです。
4. 労働環境が大幅に改善された
タクシー業界全体で労働環境の改善が進んでいます。休憩時間の確保、労働時間の適正化、職場環境の整備など、働きやすい環境づくりに各社が取り組んでいます。
特に大手タクシー会社では、新卒採用に力を入れるため、若手が働きやすい環境づくりを重視しているのです。
5. 教育体制がしっかり整備された
新卒採用の増加に伴い、教育体制も大幅に改善されました。運転技術はもちろん、接客マナーや地理の習得まで、体系的な研修プログラムが用意されています。
未経験でも安心して始められる環境が整っているため、大学生にとって魅力的な選択肢となっているのです。
6. 福利厚生が充実してきた
従来のタクシー業界のイメージとは異なり、現在では福利厚生も充実しています。健康保険、厚生年金はもちろん、有給休暇の取得促進や各種手当の充実など、一般企業と変わらない待遇を受けられます。
7. ワークライフバランスが取りやすい
タクシードライバーには隔日勤務という働き方があります。これは勤務した翌日が休みになる制度で、実質的に休日数が多くなるのが特徴です。
プライベートの時間を大切にしたい若い世代にとって、この働き方は大きな魅力となっています。
8. 業界のイメージが変わってきた
配車アプリやキャッシュレス決済の普及により、タクシー業界に対するイメージも大きく変わりました。デジタル化が進んだ現代的な業界として認識されるようになったのです。
若い世代にとって、タクシーは身近で親しみやすい存在になっています。
9. 人手不足で採用されやすい環境
タクシー業界は深刻な人手不足に直面しています。高齢ドライバーの退職が進む一方で、新しいドライバーの確保が追いついていない状況です。
そのため、やる気のある若手であれば採用されやすい環境が整っています。
10. デジタル化に対応できる若い世代が求められている
配車アプリやキャッシュレス決済など、デジタル技術の活用が進むタクシー業界では、これらの技術に慣れ親しんだ若い世代の力が必要とされています。
大学生にとって、自分のスキルを活かせる分野として注目されているのです。
11. 外国人観光客の増加でタクシー需要が拡大
コロナ禍の影響で一時的に減少していた外国人観光客も、徐々に回復しています。観光地でのタクシー需要は今後も拡大が見込まれており、安定した仕事として期待できます。
語学力のある大学生にとって、この分野は特に魅力的な選択肢となるでしょう。
タクシードライバーに向いている人の特徴3つ
大卒のタクシードライバーが増えている理由がわかったところで、次はどんな人がタクシードライバーに向いているのかを見ていきましょう。
1. 接客やコミュニケーションが得意な人
タクシードライバーは接客業の側面が強い仕事です。お客さまとの会話を楽しめる人、相手に合わせた接客ができる人に向いています。
お客さまとの会話を楽しめる
タクシーに乗るお客さまは実に様々です。会話を楽しみたい方もいれば、静かに過ごしたい方もいます。お客さまのタイプを見極めて、適切な対応ができる人は重宝されます。
相手に合わせた接客ができる
高齢の方、車椅子を利用される方、外国人観光客など、様々なお客さまに対応する必要があります。相手の立場に立って考えられる人は、タクシードライバーとして成功しやすいでしょう。
ホスピタリティマインドがある
ただ目的地まで運ぶだけでなく、お客さまに快適に過ごしてもらいたいという気持ちを持てる人は、リピーターを獲得しやすく、結果的に収入アップにもつながります。
2. 運転が好きで安全運転ができる人
タクシードライバーの基本は運転です。運転が好きで、長時間の運転も苦にならない人に向いています。
長時間の運転が苦にならない
1日の大半を運転して過ごすため、運転自体が好きでないと続けるのは難しいでしょう。運転を楽しめる人は、この仕事に向いています。
道路や地理を覚えるのが得意
お客さまの様々な要望に応えるため、道路や地理を覚える必要があります。最短ルートを選んだり、渋滞を避けたりする能力は、収入に直結します。
冷静な判断力がある
交通状況は常に変化します。安全運転を心がけながら、効率的にお客さまを目的地まで運ぶには、冷静な判断力が必要です。
3. 自己管理能力が高い人
タクシードライバーは自分で仕事をコントロールする必要があるため、自己管理能力が重要です。
自分でスケジュールを組める
休憩のタイミングや営業エリアの選択など、多くのことを自分で決める必要があります。計画的に行動できる人は、効率的に働けるでしょう。
効率的に働ける
歩合制の給与体系では、いかに効率的に働けるかが収入に直結します。時間帯や場所を考えて営業できる人は、高い収入を得られます。
目標に向かって計画的に行動できる
月の売上目標を設定し、それに向かって計画的に行動できる人は、タクシードライバーとして成功しやすいでしょう。
逆に、タクシードライバーに向いていない人の特徴
向いている人の特徴がわかったところで、逆に向いていない人の特徴も確認しておきましょう。
気遣いができない人
お客さまの気持ちを察することができない人は、タクシードライバーには向いていません。車内で快適に過ごしてもらうためには、細やかな気遣いが必要です。
ただし、これは経験を積むことで改善できる部分でもあります。最初はうまくいかなくても、お客さまをよく観察して学んでいけば、徐々に上達するでしょう。
運転が荒い人
安全運転は絶対条件です。急ブレーキや急発進を繰り返すような運転では、お客さまに不快な思いをさせてしまいます。
事故のリスクを高めるだけでなく、クレームの原因にもなるため、運転の荒い人は改善が必要です。
考えることが苦手な人
効率的に稼ぐためには、時間帯や場所を考えて営業する必要があります。また、お客さまの要望に応じて最適なルートを選ぶことも重要です。
考えることが苦手な人は、1日の営業終わりにメモを取って分析するなど、徐々に考える習慣をつけていくことが大切です。
大卒でタクシードライバーになるメリット
大卒でタクシードライバーになることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
学歴を活かした接客ができる
大学で学んだ知識や経験は、接客の場面で活かすことができます。様々な話題に対応できることで、お客さまとの会話も弾みやすくなります。
特に外国人観光客が多いエリアでは、語学力や異文化理解の知識が重宝されるでしょう。
キャリアアップの可能性がある
タクシードライバーの経験を積むことで、個人タクシーとして独立する道も開けます。また、タクシー会社の管理職や運行管理者など、キャリアアップの機会も用意されています。
安定した収入を得られる
歩合制のため収入は変動しますが、努力次第で同世代より高い収入を得ることができます。特に東京などの大都市圏では、安定した需要が見込めます。
自分のペースで働ける
隔日勤務などの柔軟な働き方により、プライベートの時間を確保しやすいのも大きなメリットです。
大卒でタクシードライバーになるデメリット
一方で、デメリットもあります。事前に理解しておくことが大切です。
周囲の理解を得にくい場合がある
「せっかく大学を出たのに」という声を聞くこともあるでしょう。しかし、実際の収入や働き方を説明すれば、理解してもらえることが多いです。
体力的な負担がある
長時間の運転は体力を消耗します。適度な休憩を取り、健康管理に気を配ることが重要です。
歩合制による収入の変動
頑張った分だけ収入が増える一方で、体調不良などで働けない日があると収入が減ってしまいます。安定した収入を求める人には向かないかもしれません。
新卒でタクシードライバーになる前に知っておきたいこと
新卒でタクシードライバーを目指す場合、事前に知っておくべきことがあります。
必要な免許と資格
タクシードライバーになるには、普通自動車免許に加えて第二種運転免許が必要です。また、地域によっては地理試験に合格する必要があります。
多くのタクシー会社では、入社後に免許取得をサポートしてくれるので、事前に取得していなくても大丈夫です。
研修制度について
新卒採用に力を入れている会社では、充実した研修制度が用意されています。運転技術、接客マナー、地理の習得など、体系的に学ぶことができます。
給与体系の仕組み
基本給に歩合給が加算される仕組みが一般的です。会社によって詳細は異なるので、面接時にしっかりと確認しましょう。
勤務形態の種類
日勤、夜勤、隔日勤務など、様々な勤務形態があります。自分のライフスタイルに合った働き方を選ぶことが大切です。
タクシー業界以外の選択肢も考えてみよう
運転の仕事に興味があるなら、タクシー以外の選択肢も検討してみましょう。
軽貨物トラックドライバー
軽バンや軽トラックを使った配送業務です。普通自動車免許があれば始められ、フリーランスとして働くことも可能です。
中型・大型トラックドライバー
中型・大型トラックの運転には専用の免許が必要ですが、高収入を期待できます。長距離運転が好きな人に向いています。
配達ドライバー
宅配便や食品配達など、配達専門のドライバーも選択肢の一つです。決まったルートを回ることが多く、効率的に働けます。
実際にタクシードライバーになるための具体的なステップ
タクシードライバーになることを決めたら、以下のステップで進めていきましょう。
会社選びのポイント
給与体系、勤務形態、研修制度、福利厚生など、様々な要素を比較検討しましょう。実際に働いているドライバーの話を聞くことも大切です。
面接で聞かれること
なぜタクシードライバーになりたいのか、どのような働き方を希望するのかなど、志望動機を明確にしておきましょう。
入社後の流れ
研修期間を経て、実際の営業に入ります。最初は先輩ドライバーと一緒に回ることが多いので、積極的に学ぶ姿勢を持ちましょう。
まとめ:大卒タクシードライバーという新しい働き方
今回の記事では、大卒のタクシードライバーが増えている理由と、向いている人の特徴について詳しく解説しました。以下に要点をまとめます。
- 新卒でタクシードライバーになる人は年々増加しており、2021年には全国で924名が業界に入っている
- 配車アプリやキャッシュレス決済の普及により、働きやすい環境が整った
- 20代前半のタクシードライバーの年収は約416万円で、全産業平均を上回っている
- 接客が得意で運転が好き、自己管理能力の高い人に向いている
- 労働環境や教育体制の改善により、新卒でも安心して始められる
- ワークライフバランスを重視する若い世代にとって魅力的な働き方
- 将来的には個人タクシーとして独立する道もある
大卒でタクシードライバーになることは、決して「もったいない」選択ではありません。むしろ、自分らしい働き方を見つけるための合理的な選択肢の一つといえるでしょう。
トラックドライバーや配達業で働いている方も、転職を考える際の参考にしてみてください。運転の経験を活かしながら、新しいキャリアを築くことができるかもしれません。